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ミュージカルの歴史 第7回 音声付きスライド
history of musical #7 slide with audio

国立音楽大学2021年度講義『ポピュラー音楽研究F ミュージカルの歴史』第7回
オンライン授業用の動画と文字おこしです。
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◆配布資料

●動画1

7 バーンスタイン(1)

●動画2

7 バーンスタイン(2)

●講義内容(文字おこし)

・導入

前回はミュージカルの黄金時代ということで、1940年代から60年代の作品をいくつか取り上げました。「雨に唄えば」が印象に残ったという人が多かったのですが、ほかの作品もそれぞれ感想を書いてくれた人がいらして嬉しかったです。「名前は聞いたことがあったけど内容は初めて知った」という人も結構いらっしゃいました。

そうなんです。新しい作品がどんどん作られる一方、昔の名作も上演されている、といっても、実際に触れる機会はどうしても少なくなっています。ぜひ、この授業をきっかけに、いろいろ見たり聞いたりしていただきたいと思っています。前回出てきた作品は全部、来年春までに日本で舞台が見られますからね。

そして今回は、前回は名前だけ挙げた「ウエストサイド・ストーリー」の作曲者である、レナード・バーンスタインの仕事を取り上げます。

バーンスタインは、作曲家・指揮者・教育者として多彩な活躍をした人です。生前は指揮者としての活動が目立っていましたが、亡くなってから、作曲家としての再評価が高まっています。3年前には、生誕100年ということあって、あちこちで作品が取り上げられました。

 視聴:バーンスタイン解説

舞台作品にも重要なものがあります。もともとミュージカルとして作られたものだけでなく、オペレッタや劇音楽として作られたものにも、今ではミュージカルとして扱われているものもあります。ここでは、そういったものも含めて取り上げます。

・オン・ザ・タウン

最初のミュージカルは「オン・ザ・タウン」。水兵さんたちが休暇をとってニューヨーク見物をする、という話です。
アメリカらしさが前面に押し出されており、バーンスタインもそれにこたえて、ジャズの要素をたくさん含んだいかにもアメリカ、という音楽を書いています。ストーリーは全く違いますが、ダンスにも音楽にも、「ウエストサイド物語」につながる要素がたくさん見られます。

 視聴:「オン・ザ・タウン」より

・ピーター・パン

バーンスタインは「ピーター・パン」の音楽も書きました。といっても、ディズニーの「ピータ・ーパン」や、日本でもホリプロが毎年上演しているブロードウエー版とは違うので、ご注意ください。それらの作品が登場する前に、劇の伴奏音楽として、バーンスタインは「ピーター・パン」の音楽を書いたのです。

当時バーンスタインは作曲家としても指揮者としても超売れっ子で忙しい毎日を送っていたため、主要な曲をいくつか自分で作って、細かいところは他の作曲家にも手伝ってもらう、という形で初演を迎えました。

初演はある程度成功したのですが、その後の再演がうまくいかず、そのうちディズニーのピーターパンが大ヒットしたこともあって、いつの間にかバーンスタインの音楽は忘れ去られてしまいました。

でも21世紀になって、バーンスタインが実は全部の場面に自分自身で曲を書いていた、ということが発見され、その楽譜が復元されて、世界中で上演されるようになりました。
本学でも、3年前の1月に音楽研究所が日本初演を行いましたので、その映像を少しご覧いただきます

 視聴:「ピーター・パン」より(国立音大による日本初演)

・キャンディード

それから数年たって、バーンスタインは1曲のオペレッタを作曲します。18世紀の風刺小説をもとにした「キャンディード」です。
話がややこしく、分かりにくいこともあって初演は失敗しましたが、その後新しい演出で再び舞台でも成功するようになり、今ではバーンスタインの「もうひとつのミュージカル」として知られています。序曲はとくに有名で、日本では以前テレビの「題名のない音楽会」のテーマにもなっていたので、覚えている人も多いと思います。

これからご覧いただくのはニューヨーク・シティ・オペラの舞台ですが、主人公の義理のお姉さんクネゴンデを演じているのは、ウィキッドのオリジナルキャストで白い魔女グリンダを演じたクリスティン・チェノヴェスという人です。

 視聴:「キャンディード」より

・ウエストサイド・ストーリー

さてキャンディードの翌年、バーンスタインが世に送ったのが「ウエストサイド・ストーリー」です。
シェイクスピアのロミオとジュリエットを下敷きにした悲しい恋の物語で、舞台を現代のニューヨークに置き換え、移民の問題や人種の問題など、アメリカらしい社会問題も織り込んで、ミュージカルの歴史に輝く傑作となりました。

バーンスタインは、「オン・ザ・タウン」で見せたようなジャズ的要素だけでなく、当時流行っていたラテン音楽の要素も盛り込んだ、斬新で個性的な音楽を書きました。
まずはドキュメンタリーをご覧ください。

 視聴:「ウエストサイド・ストーリー」解説

映画版も作られて大ヒットしました。それはそれで素晴らしい映画なのですが、重要なところで構成が舞台と違ってたりします。
できれば舞台を一度ご覧いただきたいのですが、残念ながら舞台版のよい映像がありませんので、ここでは映画版からご覧いただきます。
まず、マリアとトニーが出会うダンスパーティーの場面。

 視聴:ダンスパーティの場面

そして二人が気持ちを確かめ合う、バルコニーの場面です。

 視聴:バルコニーの場面

ちなみにこの作品の後、バーンスタインは本格的なオペラを作ろうとするのですが、指揮者としての活動が忙しくなったこともあり、オペラは成功しません。
名作というべき舞台作品は、この「ウエストサイド」まで、ということになってしまいます。

次回は、この「ウエストサイド・ストーリー」で作詞を担当したソンドハイムの作品を取り上げます。
お楽しみに。

吉成 順

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